ディストーション(歪曲収差)とは

ディストーション(歪曲収差)は、光学系やレンズにおいて生じる光の像の歪みを指す収差の一種です。光学系が理想的な像を正確に再現できないため、画像が歪んだ形になってしまう現象です。本記事では、ディストーションの原因、種類、影響、および補正方法について解説します。

  1. ディストーションの原因 ディストーションは、主にレンズの形状や光路の曲率の違いによって引き起こされます。具体的には、以下の2つの主な原因があります。
    • ラディアルディストーション(径方向歪み):光軸からの距離に応じて光の経路が曲がることで生じるディストーションです。中央部から周辺部に向かうにつれて、画像が膨張したり収縮したりする現象が生じます。
    • タンジェンシャルディストーション(接線方向歪み):光軸に平行な方向において、光の経路が曲がることで生じるディストーションです。水平方向または垂直方向に歪んだ画像が形成されることがあります。
  2. ディストーションの影響 ディストーションは、画像の形状や比例関係に歪みをもたらすため、正確な測定や画像解析に影響を与えます。
    • 歪んだ画像の再現:ディストーションによって画像が歪んでしまうため、実際の対象物や形状とは異なる形で再現されます。これは特に測定や精密な解析が必要な場合に問題となります。
    • 計量の誤差:ディストーションが存在する場合、画像中の対象物の大きさや距離の計測が正確に行えません。そのため、対象物の実際の特性やサイズを正確に評価することが困難になります。
  3. ディストーションの補正 ディストーションは、光学設計や製造プロセスにおいて最小限に抑えることが求められます。一般的なディストーションの補正方法は以下の通りです。
    • レンズ設計の最適化:光学設計において、ディストーションを最小限に抑えるための特殊なレンズ形状やレンズ組み合わせが採用されます。
    • ディストーション補正フィルター:画像処理ソフトウェアやカメラのファームウェアによって、ディストーションを補正するためのフィルターが提供されることがあります。

ディストーションは光学系やレンズにおける一般的な収差のひとつであり、正確な像の再現や高品質な画像の取得に影響を与えます。光学設計や製造プロセスにおいて、ディストーションを最小化することは、高品質な光学機器の実現に向けた重要な取り組みとなります。

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