インバーターミクロスコープ (inverted microscope)とは

インバーターミクロスコープ(Inverted microscope)は、光学顕微鏡の一種であり、試料を上から観察するために光源と対物レンズの位置を逆転させた設計の顕微鏡です。通常の光学顕微鏡では、光源が下から照射され、観察対象が上から見えるように配置されていますが、インバーターミクロスコープではその逆の配置がなされています。

インバーターミクロスコープは、生物学や細胞生物学の研究、組織培養、生物医学の分野で広く使用されています。その特徴的な設計により、以下のような利点があります。

  1. 組織培養観察に適しています:インバーターミクロスコープは、培養皿やプレートの上に細胞や組織を配置し、培養液の中から試料を観察することができます。培養物が底面に接着している場合でも、対物レンズを通して観察することができます。
  2. 大型の試料や容器を観察できます:インバーターミクロスコープは、大きな試料や培養容器を収容するための広い作業スペースを提供します。これにより、液体培養試料や生体組織の断片など、様々なサイズの試料を観察することが可能です。
  3. 細胞の活性状態を維持できます:光源と対物レンズの位置が逆転しているため、インバーターミクロスコープは試料を照射する光の影響を最小限に抑えることができます。これにより、生きた細胞や組織の観察時に活性状態を維持することができます。
  4. コンフォーカルイメージングが可能です:インバーターミクロスコープは、光学系の特性により、コンフォーカルイメージング(confocal imaging)と呼ばれる高解像度な画像取得が可能です。コンフォーカルイメージングは、特定の焦点面にのみ光を集中させ、他の領域の散乱光を排除することで、試料の断面や3次元構造を鮮明に観察する技術です。
  5. 長時間の観察が可能です:インバーターミクロスコープは、長時間にわたる観察に適しています。試料が液体培養状態にある場合や、温度制御装置を備えたインバーターミクロスコープを使用する場合、生体試料の生理的な条件を保ちながら、時間経過に伴う変化を追跡することができます。

インバーターミクロスコープは、細胞生物学や組織学の分野での研究や観察に重要な役割を果たしています。細胞の挙動や相互作用、組織の構造や発生過程などを詳細に観察するために使用され、生物医学研究や薬剤開発などにおいて不可欠なツールとなっています。

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